うちの所長知りませんか?
「どうしていなくなったかも?」

「見当がつきません」

「うーん、それじゃあほとんど謎ばかりですね? なぜ消えたかもわからないし、だいたい、どうして僕を名指ししてきたのかも意味不明ですし」

「おや、ご存知ありませんでしたか?」

と、急に白鳥さんが立ち止まる。振り返った顔は、ニヒルに笑んでいた。

「うちの所長は校内で、変人で通っているのです。『意味不明』という形容詞は、まさに所長のためにあるようなものですよ」

「そうですか」

横で声を出さず、「うあー」という顔を真美ちゃんがしていたことは、あえて無視することにした。

階段を下りて一階に。それから廊下をまた歩いて、ちょうど占い研究会の部屋がある真下に、白鳥さんは僕らを案内した。

ドアの上には、いかにも手作りらしく黒マジックで、『推理研究会』という文字が画用紙の表札に書かれていた。

ガラリとドアを開けた白鳥さんに続いて入室すると、そこはやはり四畳一間の小さな空間。

並べられたパイプ椅子に二人、メガネの男子と女子が座っていた。

二人が膝の上で開いている本は……恐らく以上に、推理小説だと思う。
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