sacra-朔良-
約束
ギシ…─
頭の中に届くのは
軋むベッドの音だけ。
後は,何も考えない。
それはいつからだったろう?
『─…美和』
熱をもった声でアタシを呼ぶ。
『─…敬』
アタシもまた,同じように彼の名を呼ぶ。
そして,ただ流れに身を任せる─…。
敬は,アタシの友達。
当然彼氏じゃないし
特別好きだったわけじゃない。
ただ,何となく。
アタシは寂しさを埋めたくて。
敬はアタシが欲しいから。
ただ,利害が一致しただけ。
アタシはこの寂しさを
どうにかしたかった。
だから別に,敬じゃなくても
よかったのかもしれない。