時代魔レヂスタンス

クラウンへ着くと、いつもの場所には貴志と力也とエミリーがいた。

今日の力也は酒もクスリも入っていなくて、私たち二人に珍しいコンビだなと声をかけた。

貴志はいつものように無言で本を読んでいて、私に気付くと顔を上げて、微笑みながら私に柔らかい印象を与えた。

「珍しくミノルがいねえんだ」

力也がそう言うと、キッドが答えた。

「ミノル、今デモ隊に加わって発散してるよ、なあ、ハル」

私は頷いて席につくと、さっき買ってきた川端康成に没頭し始めた。

ページをめくりつつ、しばらくたって、時折顔をあげると、キッドと力也が目の前でジャズについて語っている。

マイルスのペットが何だの。

エミリーはタバコ片手に二人の話を聞き、右側ではコーヒーをすすりながら貴志が本をめくっていた。

一旦顔を上げたままぼうっとしていると、私は仲間たちに囲まれている、という絶対的な安心をおぼえて、安らいだ気持ちを確認すると、再び小説に没頭するのだった。


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