魔法の角度
彼女は仲間から『金星』と呼ばれているのを、知っていた。
僕も心の中ではそう呼んでいた。
驚いて、つい言っちゃったんだ。
「藤金さんはどうして屋上に来たの?」
憧れの彼女の出現にテンパりながら僕は聞いた。
「邪魔?」
彼女は小首を傾げた。
なんだか、…絵になる。
僕はブンブン首を振った。
「一緒にいてもいい?」
ガクガク頷いた。
「青地くんは屋上で何してるの?」
彼女に見とれている場合じゃない。
焦る僕をよそに彼女は空を見上げた。
風が吹いて、彼女からはシャンプーのいい匂いがした。