ラストダッシュ。
これがあたしとあの人の出会いだった。



学校の帰り道、すぐ家には帰りたくなくて、公園に立ち寄り、あたしはブランコに座ってた。


『ね、どうしたの?』



『へ?』


顔をあげると20代くらいの背の高いスーツ姿の男があたしを見下ろしてた。


『だって、泣いてるじゃん...。』

彼はそう言うと隣のブランコに腰をおろした。


『どうもしないのにふつう泣く?』



彼はそう言ってブランコを軽くこぎだした。


そのときあたしは初めて自分の頬に涙がつたっていることに気づいてハッとした。


泣くのに気づかないくらい考えごとするなんて...。


『…あ、だいじょぶですから。なんかすみません。』


我にかえって隣でブランコをこぐ彼にそう告げた。
< 8 / 10 >

この作品をシェア

pagetop