ラストダッシュ。
『ふ~ん。ならいいけど。』

彼はよりいっそうブランコをこいだ。


彼のこぐブランコはあたしなんかよりずっと上にいて、どこかに飛んでいけそうなくらい軽やかにだった。


『ん~じゃあ!!!これ!!!』


『え?』


『泣き虫にはこれをあげよう!!!!』


彼は少しだけ大きな声をだすと、高い高いブランコから地面へと着陸した。


『...いってぇ!!!』


その着陸は完璧と呼べるものなんかじゃなく、情けないヨタヨタした着陸だった。


『これ、これ、やる!』


彼は少しだけ微笑んであたしの目の前に彼は立ち、はいっと一枚の紙をあたしに手渡した。


あたしはその紙に目を向けた。

名刺だった。

『んじゃ、また!!!』


そう言うと彼は手をあげ、スタスタと歩いて行った。

『ちょ、ちょ、まっ..て!!』

これがあたしとあの人との
出会いだった。
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