DEBU×KOI[短編]
O3.奇跡




工場で働くのが
そう長くは続く訳もなく。





それから私は

工事現場や、
夜のビルの掃除。


人に会わない様な
労働作業だけを
転々していきました。







冬頃。


ビルの清掃をしていました。



夜のビルは暗く、
孤独な世界だった。








ポーンッ







エレベータの中を
掃除していると、


男の人が入って来た。



「…お疲れ様です。」




男の人はそう言って
エレベータに入り
一階のボタンを押した。





私には、
密室が怖くて
仕方なかったんです。








冷や汗が
首をつたう程。








すると、
ハンカチを持った手が
突然顔の前に現れました。






私が顔をあげると、


嫌な顔をせずに
笑ってハンカチを
渡してくれている


男の人がいました。



「どーぞ^^」



私は、
そんな経験初めてで
少し戸惑いました。




勇気をふりしぼり
手をのばしました。


「すみません。汗っかきで。居心地悪いでしょ。」



すると、
男の人は笑いました。



「居心地悪いなんて。僕もたまに汗かきますよ。」


私には
夢としか思えず、
ただ ぼーっ と
立つ事しか出来なかった。


ポーン…



「…では。お疲れ様でした」


男の人は
笑顔でエレベータから
降りていってしまいました。




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