月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
里見さんには新人の頃からお世話になっている。

鑑識課でもベテランらしいが、その年齢は誰も知らない。

本人に訊いても「秘密」と言って氷のような微笑を返すだけだという。

「なにか出ましたか、里見さん」

「犯人らしい指紋はなかったけど、とりあえずこっちに来て」

浦川警部が訊くと、里見さんは手招きをしてあたしたちを台所へと連れていった。

「これを見て」

里見さんが指したのは、流し場にあったライト。

そのライトには蛍光灯がなかった。

「ライトの周辺には血痕があったわ。恐らく被害者のものね」

「被害者が蛍光灯を外したんですか」

「レミ、被害者は即死だぞ」

「あ」

達郎に突っ込まれるとは不覚。

「だとすると犯人が取り外したんですかな」

「たぶんね」

「ちょっと待ってください」

あたしは警部と里見さんの会話に割り込んだ。

「それじゃなんですか、犯人は金品には手をつけずに、蛍光灯だけを盗んだってことですか?」

< 17 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop