月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
「明けましておめでと。やっぱあんたか」

「おめでとさん。やっぱとは何だよ」

3つ年下のイトコ、月見達郎はそう言って笑った。

『あたしのことをレミとなれなれしく呼ぶ男はあんただけって事よ』

そう思っただけで口にはしなかった。

言ったところで「へぇ」と返されるのがオチだ。

「聞き込みの途中かい?」

あたしはうなずいた。

「よくわかったわね」

「殺されたサラ金業者の自宅ってこのあたりだろ?」

達郎の指摘に、あたしは再びうなずいた。

あたし日野麗実は警視庁捜査1課2係に所属する捜査官・つまり刑事だ。

今朝から丸1日歩き回っていたのは強盗殺人事件の捜査のためだった。

事件が起きたのは一昨日6日のこと。

消費者金融の経営者・吉沢信夫(63)が殺害された。

現場は店内で、巡回のガードマンによって遺体が発見されたのは午後7時すぎ。

< 2 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop