月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
羽田修は無精ヒゲにボサボサの頭、紺のジャージの上に綿入れを羽織り、首に茶色のマフラーを巻いていた。

とても20代には見えないたたずまいだ。

「すみません。先ほども部下がお話を伺ったと思うんですが…」

警部が話を切り出した。

「さっき来た刑事さんにも言いましたけど、今日は朝からずっと部屋にいましたよ」

暮れから正月三が日以降もずっとバイトに明け暮れていたため、昨日から体調を崩し、寝込んでいたそうだ。

「では事件や停電のことも?」

「ちょうど寝てた時で、後から警察の人や管理人さんに話を聞きました」

浦川警部と羽田のやりとりを聞いてたら、達郎の視線がふと気になった。

達郎がずっと羽田修の首もとを見ていたからだ。

「では最後に」

警部が達郎を見た。

「達郎君の方で何かありますか?」

「ひとつだけ、いいですか」

達郎は羽田が巻いているマフラーを指した。

「そのマフラーは、朝からずっと巻いていたのですか」

羽田は一瞬、呆気にとられた様子だったが、すぐに苦笑いを浮かべた。

「光熱費もバカにならないので」

「そうですか」

間の抜けた質問だったが、達郎の顔には真剣な表情が浮かんでいた。

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