月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
視線を床に落とし、唇を尖らせている。

何かまだ推理に決め手を欠いてる時にやる仕草だ。

その時、1人の私服警官が浦川警部のもとに走り寄ってきて、何かを耳打ちした。

「そうか、わかった」

警部はうなずいた。

「1月6日に下瀬智広が警備を担当してた場所がわかりました」

「どこでしたか」

「駅前のSビルです」

「ええっ!?」

あたしは思わず大声をあげてしまった。

「どうした、レミ」

「そこって殺されたサラ金業者が入ってたビルよ!?」

ということは下瀬智広がサラ金殺しの第1発見者だったのか。

事件を担当してる捜査員なのに、どうしてあたしはその事に気付かなかったのだ、くーっ。

「でも、ビルに入ってたサラ金業者が殺された後にガードマンが殺されるってどういうこと?」

あたしの問い掛けに達郎は再び無言を返した。

でもその視線はしっかりと前を向いている。

達郎の右手がスーツの内ポケットに入った。

そこから取り出したのは本屋を出た後に買った、あの缶コーヒー。
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