月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
「そのまま流し台まで行き、暗がりの中、手探りで蛍光灯を外す」

みっつめの品、蛍光灯は手にとらず、指差すだけだった。

そして達郎はマフラーで発泡スチロールのフタをこすり始めた。

「こんなもんか」

ひとしきりこすった後、マフラーを蛍光灯に持ち替え、スチロールのフタにあてがう。

次の瞬間、あたしは目を丸くした。

まるでスイッチを入れたかのように、蛍光灯の明かりがともったからだ。

「摩擦電気ね」

里見さんが眼鏡の位置を直しながら言った。

「理学部の学生だったら誰でも思いつくトリックだわ」

「羽田はこの明かりを使って自分の免許証を探し出したのね?」

達郎はうなずいた。

だがフタや蛍光灯を元の場所に戻す前に下の階から奥さんと管理人のやり取りが聞こえてきた。

「そのため羽田は、あわてて部屋を後にした。蛍光灯を片手に、ね」

「それで蛍光灯が盗まれた殺人現場なんていう、妙なシチュエーションができあがったワケね」

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