月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
あたしが納得すると里見さんが小さく拍手した。

「さすが達郎くん。よく摩擦電気なんて思いついたわね」

「フタにあいた小さな穴ですよ」

達郎は手にしていたフタを見せた。

「あの穴は蛍光灯を押しつけた跡じゃないかと思ったんです。あとは最近ハマってる科学雑誌が役にたちました」

達郎の口調に得意気という響きはまったくなかった。

こういう態度が現場での信頼を得ているんだろうなとあたしは思う。

自分の推理を鼻にかけているようなヤツだったらそうはならない。

でもあたしには納得できない点があった。

「ねぇ、どうして羽田を現行犯逮捕しなきゃいけなかったの」

「あの状況から考えて、容疑者は羽田以外には考えられなかった」

それはそうだ。
もし下瀬政美と村本良彦が共犯だったなら、遺体発見時に大声をあげたりしない。

その結果、あたしたちという第3者が来てしまったのだから。

遺体の始末は2人でこっそりやるに決まってる。

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