月と太陽の事件簿2/点灯す(ともす)
けっきょくあたしは何も買わなかったが、達郎はその科学雑誌を購入した。

雑誌をカバンに入れてる達郎を見てたら、ある事に気づいた。

「ねぇ、なんであんたがこの界隈にいるの?」

「なんだよいきなり」

「ごめん。だってこのへんあんたの家や大学と逆方向じゃない」

「美味い栗ぜんざい出す店があるんで、講義が終わってから食いに来たんだよ」

達郎は大の甘党だ。和洋中問わず甘い物には目がない。

その熱心さは女のあたし以上。花畑牧場の生キャラメルは達郎に教わった覚えがある。

「でもよく男1人で栗ぜんざいなんて食べに行けるわね」

想像したら違和感がありありだった。

「慣れれば平気だよ」

「そりゃ大したもんだ」

「どういたしまして」

いや、ホメてないから。

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