じいさんとアタシ

振り向くと、トミさんがいた。


「あ…こんばんわ…」


トミさんはなぜかいつもごみ捨て場で着ている作業着ではなくて、モールの警備員の服を着ていて、誰だか一瞬わからなかった。


そんなアタシの疑問に気づいた様子もなくて、楽しそうに話しかけてくる。



「どうしたの?おつかい?」


「いえ…」


「そうだよねぇ。こんな時間におつかいはないよねぇ」


「はぁ…」


「あ、昼間はすまなかったね。ケンさん、いつもは優しいんだけど若い子には誰でもあぁなっちゃうんだよ」



「いえ…」



「仕事は誰にでも厳しいんだけどね」とトミさんは付け加えた。

その笑顔はとても優しかった。









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