じいさんとアタシ
「さっきは本当にありがとうございました。
あの…もう1人の…」
「あ、ケンさん?」
「はい…最後失礼なこと言っちゃって…すいませんでしたって伝えといてください」
「お嬢さんが気にすることないよ。
ケンさんもお嬢さんが帰った後、後悔してたよ」
「まさか~そんなことあるわけないじゃないですか!」って思わず言いそうになったけど、その言葉は飲み込んだ。
ちょうど、トミさんの無線機から何か聞こえ会話が途切れた。
「じゃ、アタシはこれで。」と、その場を去ろうとしたとき「お嬢さん!」と呼び止められた。
「今度…俺たちの話し相手してもらえるかな?」
「え?」
「こんなじいさん…嫌だろうか?」
なぜだかアタシは嫌じゃなかった。
それに話す機会なんてもうないだろうし。
「いいですよ。」
気づけばそう答えていた。
アタシの答えを聞いたトミさんは、またあの優しい笑顔で手を振って店の外へ出て行った。