じいさんとアタシ
「…だってよ、ケンさん。挨拶だって」
しばらく無言が続き、それに耐え切れなくなったように、
ズミさんが言った。
「わかってるよ、挨拶すりゃいいんだろ」
投げやりにヤツがアタシを見ながら言う。
しかしさっきまでアタシを睨んでいた目はもうしてなかった。
「ひかりちゃん、ケンさんのためにも言っとくけど…
ケンさんね、ちゃんと僕たちには声かけてくれたり、
仕事で困ってたりすると助けてくれるんだよ?
でも若い子には…」
「よせ、ハル。言うな」
「でも…」
「言うな、言ったらお前はもうここには立入禁止だ」
「…」
「ちっ。場がしらけちまった。早くトミさん戻ってこねぇかな」