じいさんとアタシ
「ひー?」
近くで愛しい人の声が聞こえる。
「トミさんの秘密はオレとひかりの秘密だからな」
アタシに背中をむけたケンさんがポツリと言う。
さっきも「ひかり」って呼んでくれたけど、面とむかって言われるのは初。
なんだかそれが、付き合いはじめて間もない頃のアタシとケンちゃんを見ているようで、
懐かしくもあり、恥ずかしい気持ちにもなった。
「わかってます。ケンさんとアタシの秘密です」
アタシがそう答えると「ふんっ」と鼻をならし、戻って行った。
「タバコ…買ってないじゃん」
空気は湿気をはらんでいて、ジメジメしていたけれど、
アタシの心の中はなんとも言えない爽やかさを感じていた。