じいさんとアタシ
「殴っちゃったのは良くないし、ケンちゃんらしくないけど、
藤堂さんはアタシの気持ちを知らないで言ってるからさ。
別にそれでケンちゃんを責めたりしないよ。
だけど飲みすぎには注意してね♪」
アタシがそう言ってケンちゃんの手を握ると「うん」と、いつもの優しい彼に戻った。
翔ちゃんもタイミングよく戻ってきて、その話をすると、
「ケンにそんなに愛されて、お前は幸せ者だな」
と言われた。
「だけどさ、あの藤堂ってヤツには気をつけろよ?」
と、ファミレスを出て家に帰るときにケンちゃんが言った。
「うん?でもなんで?」
「なんかアイツ・・・怪しい気がする。
男のカンだけど」
「お父さんになるって言っても、アタシには関係ないもん
アタシはお父さんだなんて思わないし」
「そうだな。だけど俺が心配」
ケンちゃんの心配がこのあと的中するなんて、このときのアタシは全然考えてもいなかった。