じいさんとアタシ

「『レジの打ち間違いには気をつけてね、月島さん』」


彼がそう言って誰だかわかった。


アタシが中学のとき、バイトをしていたコンビニにいた人だ。



「誰だかわかった?」


アタシが頷くと、彼は話しはじめた。




まだ駆け出しの建築士で、お金がなくてコンビニで掛け持ちのバイトをしてたこと。



その時にアタシに会って、好きになったこと。



その気持ちに気付いたら、アタシはバイトを辞めてしまっていた。



そしてたまたまお母さんに会って、アタシの写真を見たこと。



「また会えて本当に嬉しかったんだよ?」


彼はそう言いながら、アタシの首に下をはわす。




< 284 / 292 >

この作品をシェア

pagetop