Is this a Fiction?

中心部からは少し離れた駅の小さな繁華街。

大通りには面していない一角の雑居ビルに店はあった。

ラウンジA。俺が働いていた店だ。

何時もならそれなりに客も賑わい、店内が騒がしくなる夜の時間、ある日何故か一名の客も入らない……そんな日があった。

差程大きくもない店内は静まり、アイスピックで氷を割る音だけがカウンター付近に響く。

店の女の子達は勿論、数名が出勤していたが、しかし客の居ない店の中、皆頑に口を閉ざしカウンターでうつ向き加減に腰を降ろしていた。

俺もまた、その空気の重さを感じながら無心でただひたすら……氷を砕いていた。

理由はわかっていた。

一番奥のBOX席……。

カウンターからは隠れたその席には、オーナーママと一人の女性が腰を降ろしていた。

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