LAST contract【吸血鬼物語最終章】
LAST contract -mark 4- 葵目線
外の冷たい空気によって、日頃から冷たい僕の手は
まるで、氷の様だった。
スミレ、お前は逆にいつも温かい手をしていたね。
『アオちゃんの手、冷たくて気持ちいい』
『そう?』
なんて言いながら、よく僕の手を握ってきた。
そんな事を考えながら、僕は公園に足を進めていた。
公園に付いて、ふと、大きな時計を見れば午後5時を指していた。
冬はこの時間でも結構暗い。
僕は足元に視線を送った。
目には、もちろん地面と自分の足しか映っていなくて‥‥
でも、
聞こえてくる。
足でリズミカルにステップを踏んでいる音。
スミレの楽しそうな声が、途切れ途切れに。
「やっぱり此処にいた。菫の1年前の今頃って、受験シーズンでしょう?だから、ストレスの発散とか言って、毎日ここに来てたよね」
葵さんも、見てきたから分かってるか。
桃は苦笑しながら、先輩と目を合わせて肩を竦めた。
僕たちはスミレの踊る姿を、ただ静かに見つめた。
嘘みたいだよ。
今のお前が、僕の事を分からないなんて。
好きな事や、しゃべり方とか
全然、何にも変わっちゃいないのに。
なんか、お前から弾き出されたみたいだ。
それか、嘘だったんだ。
今まで僕たちが共に過ごしてきた日々は。
僕はきっと、とっても長い夢を見てただけ。