LAST contract【吸血鬼物語最終章】
LAST contract -mark 5- 葵目線
‥‥何故、でしょう。
「‥はぁ」
紅茶は右手に。
左手というか、左腕には女の子が腕を絡ませている。
何で、こうなっているのかなぁ‥。
ていうか、何で君が生徒会室に今日も来ているのかな?
「‥‥鳩羽ちゃん、離してくれない?」
「え~、いいじゃないですか。寒いですし」
「ここ、暖房効いているから暑いくらいなんだけど」
僕はスルリと彼女から抜け出して、向かいのソファーに座った。
うわぁ、あからさまに不機嫌な顔。
そんなんじゃ、折角の可愛い顔が台無しだよ。
ま、スミレの方が可愛いけど。
‥‥じゃなくてっ!!
スミレが記憶をなくして今日で3日目。
彼女は昨日の休み時間から、生徒会室を訪れるようになった。
先輩たちは、それからずっと、溜め息をついてばかり。
「はぁ‥」
僕も、ね。
「どうしてここに来るの?」
「いけないですか?」
別にいけなくはないけど‥。
僕、君とはあんまり関わりたくないんだよね。
ちょっと、苦手なタイプ。
なんて、彼女に言えるわけもなく‥‥
「葵様に会いたいから、ここに来ているんです」
「そう」
「それに、菫ちゃんがここに来ないから、代わりに‥‥」
「悪いけど、スミレの代わりになれる子なんて、何処にもいないから」
スミレの代わりなんて、いらない。
僕が欲しいのはスミレ本人だけ。
「‥‥でも、私、諦めませんから」
鳩羽ちゃんは僕を睨みつける様に見て、生徒会室を出て行った。
それを見ていた先輩たちは、感心した目で僕を見た。