LAST contract【吸血鬼物語最終章】
LAST contract -mark 8- 葵目線
生徒会室から出て冷たい空気に触れたら、体の力が抜けた。
廊下を曲がって、背中を壁に任せるとズルズルとその場に座り込む。
吐いた息は熱く、白く形になっては消えていく。
もう、スミレは僕の前に姿を現さないだろう。
記憶を戻すまでは。
最低の場合、記憶を戻しても現さないかも。
‥酷い事、したから。
がっくりと首を落とせば、制服が水滴で濡れた。
「‥‥馬鹿、だ」
表面では平気な振りをしていたけど、心は相当まいっていた。
スミレが記憶を無くしたって聞いた時
涙なんか出やしなかったのに。
今になって、
こんなに苦しいのは‥‥
バタンと扉の閉まる音が聞こえた。
立ち上がって扉の方を覗けば、スミレの後ろ姿が遠ざかっていく。
僕はその後ろ姿を、ただ見送る事しか出来なかった。