LAST contract【吸血鬼物語最終章】
LAST contract -mark 16- 桃目線
ちょっと出てくる。
そう言った葵さんは、複雑な表情だった。
菫はたった今、その葵さんを追いかけて出て行った。
今日は冬を忘れるくらいの、快晴だった。
沢山の日を浴びた洗濯物をたたんで、紅を振り返る。
葵さんが此処を出て行く、ほんの少し前。
いつの間にか紅は眠っていた。
今日干していた厚めのタオルケットを、紅にそっと掛ける。
ゆっくりと呼吸を繰り返す度に、上下する胸。
その胸の辺りは、微かに赤に染まっていた。
この傷は、私のせいじゃないのかな‥。
私を、守ろうとして‥。
「ゴメンね、紅」
この言葉は、ちゃんと届いているとは思えない。
けれど‥
「また私のせいで大怪我させてしまって‥、いつも守ってくれるのに、私は‥」
何も、出来ない。
「紅に迷惑掛けてばかりで、紅は本当に私で良かっ‥」
途端、世界がひっくり返って、紅の顔と天井が見えるようになった。
「こ、紅っ‥!」
「なんだよ、聞いてりゃぐちぐち弱音吐きやがって。面倒臭ぇヤツ」
聞いていたって事は、もしかして狸寝入りだったって事?
それより‥、面倒臭いって‥
「だ、だって紅、私のせいでいろいろ大変な目に何度も合ってるんだよ!?」
「だから俺は、終わった事をそう言う風にいちいち考えんのが面倒臭ぇってんだ」
紅の真っ赤な瞳が、私を貫いてきた。
その瞳に囚われて、ドクンと心臓が大きく跳ねた。