LAST contract【吸血鬼物語最終章】
紅は、いつも欲しい言葉をくれる。
私が欲しい時に、何も紅に伝えなくてもくれる。
不器用でも、優しく。
「‥紅、あのね」
「な、なな、なんですかッ」
顔を見上げれば、紅は顔を真っ赤にしていた。
‥なんで敬語?
「‥ゴメンね」
「‥‥」
紅は何も言わない代わりに、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「‥可愛いから、許す」
「何それ」
耳まで真っ赤にしてそう言う紅も、可愛いと思ってみたり。
「絶対、離さねぇから」
「うん」
「絶対、桃の事守ってやるから」
「うん」
「絶対、幸せにするから」
「‥プロポーズみたい」
「してんだよ」
突然の告白に、しばらくポカ~ンと固まった後
慌てて下を向いた。
「お、おい‥!何泣いてんだよ」
「‥‥紅が、こんなに想ってくれてたんだって思ったら‥なんか、出てきちゃって‥」
あんな、酷い事考えたのに。
なのに、それでも紅は‥
私を離さないって言ってくれた。
「ありがとう」
ちゅっと涙に口付ける紅は、しょっぱいと笑った。
「俺の傍に、いてくれるか?」
「はい、もちろん」
どちらともなく口付ければ、
「‥本当だね、しょっぱい」
幸福の、味がした。