LAST contract【吸血鬼物語最終章】
「‥どうして、此処に?」
そう問い掛ければ、スミレは僕の正面に来た。
1週間ぶりに見たその顔は、少し疲れ気味の様。
「‥アオちゃんに、会いにきたの」
スミレはそう言うと、ハァ‥と手に息を吹いた。
やっぱり、海辺は寒いからね‥。
「それと、ね」
「‥それと?」
「アオちゃんを一発叩いてやろうと思ってきたの‥ッ!!」
「ええぇぇぇ‥っ!?」
そう言うと直ちにスミレは、僕に襲い掛かってきた。
さっき手に息を吹いたのは、僕を叩く為だったのですか‥!?
「わっ‥ちょ、スミ‥‥ッ!!」
スミレの手を抑えるのに気を取られていた僕は、スミレが乗っかってくるとは思ってもなかったから‥
「ま、待たないもん」
乗ってきた反動で、砂浜に転がってしまった。
ああ‥、これじゃあズボンだけじゃなくて、ジャンパーにまで砂が付いたじゃない。
乗っかってきたスミレといえば、いかにも、怒っています。な顔。
ったく、それじゃあ可愛い顔が台無しだよ?
砂に付かないように上げている頭のせいで、だんだんと首が痛くなってくる。
‥‥思ったんだけど、
これは周りから見たら、
スミレが僕を押し倒していて
‥僕がスミレから押し倒されている。
様に、見えるよね‥?コレ。
って、普通逆だよ、逆っ!!
スミレが僕に押し倒されて、僕がスミレを押し倒すんだから。
それで何にも問題無し。
‥‥いや、今はそんな事どうでもいいんだけど‥。
スミレ、少し痩せた‥?
前も十分軽かったけど、今の方が軽い気がする。
「スミレ、退いて欲し‥」
「死ぬ気なの?」
突然の言葉に、僕は驚いた。
いつもの顔とは違う、真剣な顔。
言われた事が当たっているものだから、僕は言葉を飲み込んで
沈黙を流す事しか出来なかった。