LAST contract【吸血鬼物語最終章】
LAST contract -mark 3- 葵目線
貴方、誰?
スミレは確かに、僕を見て言った。
その言葉を聞いた時、何かの冗談だろうと思った。
何の冗談言ってるのさ。と僕が言えば
ねぇ、此処は何処なの?って、もう一度訊いてきた。
どうやら冗談なんかじゃなさそうだ。
そう思ってもさ、
人には認めようと思っても、認めたくない事がある。
とりあえず病院に行って診察を受けさせた。
目立った外傷は、頭を打った際に出来たタンコブくらいで。
体の所々は、軽く打っているだけ。
スミレの両親からその報告を受けて、僕は安心した。
でも‥‥
「‥え?」
「本人に『今、何歳?』訊いてみたんだけど、『3月の終わりごろに15歳になるでしょ?』って言っていてね」
「‥15、ですか」
「恐らく、ここ一年程の記憶を頭を強打した影響で、忘れてしまっているのでしょうってお医者さんは言っていたわ」
そう訊いた時、僕の頭は真っ白になった。
いや、真っ黒と言った方がいいのかもしれない。
一年。
それは、スミレと僕が付き合うよりも、出会うよりも前を意味していた。
つまりスミレは、僕の事を全て忘れているという事。
『貴方、誰?』
不思議な顔をして、僕に問いかけてきたあの瞳は
本当に偽りじゃなかったのか‥。
嘘だと、思いたい。
こんな、悪夢のような現実を。