いとしいひと


「えっ?ええっ!?
あ…朱里ちゃん…?」


「う〜……」


あたしは子供みたいにしがみついて泣いてしまった。




――――きゅっ


びっくりしていた橋口さんが…
あたしを抱きしめ返してくれた。


その暖かさに、あたしはもっと涙が止まらなくて…



「…朱里ちゃん?

俺、こんなふうに抱き着かれたら期待しちゃうんだけど……」



え??

………あ。


何やってんの!?あたしってばっっ!!


ガバッ


「ごごごめんなさいっっ!!」


あたしはとっさに離れようと顔を上げた。


「………やだ」


ぎゅうっ


「う…あ…?」


あたしはまた橋口さんの腕の中。



「駄目。
離さないよ………?」



「はは橋口さ…ん?」



「嫌…?」


う……ずるいよぅ。


「嫌じゃ…ない。
嫌なわけないよっ…!」




そうして、また。


あたしはきゅっと橋口さんの背中に手をまわした………







< 79 / 86 >

この作品をシェア

pagetop