二股男─甘い誘惑切ない葛藤─
「愛……好きだ」


俺は、愛の瞳をまっすぐ見て囁く。


愛は、まだ
困惑した表情を浮かべていた。


彼女からすれば、俺の胸に飛び込む事は
友達を裏切ることに繋がる。


そう簡単には決断出来ないだろう…


でも、自分の欲望の為に
弱り切っていた愛の心に
付け入った俺は
後々、愛を更に傷つけることになるなんて
気づいていなかったんだ。



「しい君……」


愛は、消えてしまいそうな小さな声で
俺の名前を呼んだ。



「何?」


「私でいいの?私は──汚いよ?」


そんなこと言ったら
俺なんかもっと汚いって……


「汚くなんかないよ…
俺は──愛を救いたいんだ」



本心だった……
ひろ子の心を救えなかった俺──…


だから、愛の心は救ってやりてぇんだよ。


きっとそれが、ひろ子への償いにもなる。


きっと──…。
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