群青の月 〜『Azurite』take00〜
―― 明け方
頭に腕を充てて、
目をつむっていると
ソッと毛布から抜け出す音
しかし暫く静止して、俺の様子を見ている
目を開いて
「 起きてるぞ 」 そう言った
あまりに体が冷えていたから
俺も一緒に横で、添い寝したのだが
多分、何もされていない事に
驚いたんだと思う
「 …カッパに手出す程、飢えてませんよ 」
奴は起き上がり、何故か正座
俺も起きて、胡座をかく
なんだかションボリ下を向く奴に
肩から毛布をポンと掛けた
サイズがデカイ
藁のミノを着た子供みたいでおかしい
窓から日が射して来て
部屋のホコリが、チラチラと光っている
奴はそれをぼんやりと見て
ゆっくり手を出し、それを触ろうとした
――― 指の周囲だけ透けて
両生類みたいだなと思う
日が陰って、それが消えると
また床に目を落とす
…水掻きは無いな
「 …お前、
昨日なんで追い掛けられてたんだ? 」
「 ……改造手術から逃げて来た 」
「 ―― 目的は何? 」
「 世界征服って言ってた… 」
「 …カッパ怪人に世界征服は微妙だな
まずこれから、家に来い
…昨日も言ったけど、何もしないよ 」
「………」
「……じゃあこれ預けるから
俺の相棒」
「……?」
俺は立ち上がって
キッチンの横に立て掛けておいた
黒いソフトケースの取っ手を持って
奴に差し出した
中にはベースが入ってる
奴は剣を授かる何かの様に
両手でそれを受け取った
妙に、それを膝に抱えるその姿が
しっくり来ていて
「弾いていいよ」と言って見る
するとビクッとして
手を後ろに返し、首を振った
―とにかく家に連れて帰ろう
「 ここ禁煙だから出ないか
一晩吸って無くて死にそうなんだ 」
俺は毛布を畳んで脇に抱える
そしてドアを開け
頭にぶつかりそうな木枠の下で
奴が来るのを待った