群青の月 〜『Azurite』take00〜


―― 翌日


朝から講義があり、俺は早めに学食で
蕎麦を一人で食っていた




「 青山くん!おはよう 」


振り向くと、佐伯が立っている
同じ外国語を専攻してる女性だ



「 青山君が
学食で食べてるって珍しいね
いつもそこの定食屋でしょ? 」


「 …雑誌に紹介されてから
人が多くなって、最近は行ってないよ 」


「 へえ!じゃあ美味しいんだ

…ちょっとそうだよ!
こんな話してる場合じゃなかった

青山くん、君…三枝さんの事
全然知らない山奥に
置いて来たってホントなの?! 」



ここ数日
何人かから、同じ事を聞かれている

そのままトレイを持って、席を立った



「 …ちょ!待ってよ 」




―…山奥ではないけれど
駅前で突然、車から降ろしたのは本当だ


理由は本人も
あまり良く分かっていないし
言う気も無い


知り合ったのは一週間前

『外国への見識を広める会』
そう言われて

外国人が集まるケイジャン料理の店に
連れて行かれたら
合コンだった、ってだけの話



最初は明るくて、気も回るし
いいなと思ったから
聞かれた時、携帯を教えた


でも車でドライブしている途中
彼女は窓から、ゴミを捨てたのだ





風で飛ばされたのかもしれないし

俺は車を停めて、拾っておいでよと言った
すると、え?!要らない物
捨てただけでしょ?と


だから俺も
「 じゃあ俺もお前要らないわ 」と
ニッコリ笑って置いて来た



別に何もかもきっちりしろとは言ってない

俺だって毎日あの家の床を
水拭きしてる訳じゃない
服だって脱ぎっぱなしの事も良くある


ただ、どんなに可愛くても
そういう部分に、一発で冷める




女の人は
『99個悪くても、
1個が良ければ男を許せる』そうだが

1個が自分の中で、決定的に悪いと
99個良かろうが、
どうしても、無理な事がある






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