群青の月 〜『Azurite』take00〜





横濱の、土産物屋の店頭に
目立つからと飾られている『被り物』


デカイ顔の異国風の東洋人が
満面の笑みを、原色で浮かべている




「 やっぱり、一回見て貰いたくって

…大変だったんだからね?!


約束守ろうと思って
青山くんの家、探して行ったり

お爺さんに怒鳴られて
びっくりして帰っちゃった…

テレビ局に行った時も
出演者だっていってるのに追い返されるし
すごい失礼じゃない?! 」





顔の見えない
水色のワンピースが、風に揺れる

イベント中だから
周りもこの異様な姿を気にもしない



疎らに立つ
白い仕切り壁の中で

真木はしゃがんだまま目を見開き
池上は少し、後ずさった




「 …何言ってるんだ……佐伯 」



真木が呟く







「 え〜!!合コンの時言ってたじゃん!

ボーカル
一度はやってみたいなあって言ったら
"ボーカル、今、
俺のバンドに居ないから
一回やりますか?"って…


顔自信な〜い!って言ったら
"全員で、かぶり物でもして"って…
すっごい優しい笑顔で
青山クンも、言ってくれたじゃない 」






「 ……冗談に決まって… 」


―― 酒の席での冗談

周りも笑い、それで流れた筈の会話



「 じゃああれは?!
三枝さんには
可愛そうで言えなかったけど
アタシを好きだから振ったんだよね?!
青山クン、携帯教えてくれたもんね?!」



「 ―…両隣だったからだ 」







佐伯が 少し唸った







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