群青の月 〜『Azurite』take00〜
―― それから暫くの記憶は
今でも全て、鮮明に覚えていて
あずるが救急車から病院に
タンカで運ばれ手術室に入る前
『ここどこ?』と言った事も
医者に『覚悟しておいて下さい』と
言われた事も
直後に、竹田さんと
少し若い位の外国人が現れ
『近くのデカイ病院に移送する』
と言った事も
事情聴取と言うのを初めてされて
佐伯とはどんな関係か
そしてそこで
佐伯は実は、今大学を休学していて
心の病院に入院していた事を
聞かされた
あずるは面会謝絶のままで
俺は病院の外に、ただ居た事もあった
そんな事情聴取と
面会謝絶の隙間で
―― あずるは姿を消してしまった
新宿の屋上
干したままの洗濯物が
排気ガスとビル風に煤けていた