群青の月 〜『Azurite』take00〜
公園を入ると薔薇壇
いくつもの生け垣の横にベンチ
自転車に白い保冷庫
『アイスクリン』の旗が立っている
夕方になると屋台のラーメン屋と
かなり美味いおでん屋があるのだが
まだ早いせいか、閉じたままだ
その向こうの景色は海――
水平線には、コンビナートの影
マリーナタワーがあった頃は
氷河丸と言う船が浮かんでいたらしいが
今はデカい
水上レストランになっている
自動販売機でアイスコーヒーを買い
木陰にある休憩場所に歩く
小さな聖堂の屋根を模した中に
丸いテーブルと椅子
夜などは
真っ先にカップルに占領されるが
今は幸いと、誰も居なかった
缶を片手で押さえ、
その人差し指で開け、口に運んだ
…木陰の向こうで、微かな歌声がする
椅子から体を浮かし、
少し斜めにして、そちらを見ると
――…あのカッパが、昨日の姿のまま
またもや、キュウリをかじっていた