群青の月 〜『Azurite』take00〜




確か"黒いタンクトップ"を
用意してくれと言われた



…そう言えば毎回
コンセプトやらに煩くて
それでヴォーカル殴って
やめたんじゃなかったかなと
思い出す


あの時は、腕を折って
病院に少し、お世話になった


…そこから電話が来るとか
最近はベーシスト不足なのか



駅前に、安い定食屋があって
そこの隣に
大学時代によく通っていた
ジーンズショップがある



相変わらず表には
沢山の古着風のジーンズが
下げられていて

プリントTシャツが
よりどり二枚で1980円と書いてあった


中にはジーンズの棚と、
シルバーアクセのショーケース



服に隠れてレジがあり

―― なんだか客に
楽器を持っている奴が多い気がした



そうだったな
学生は夏休みか



横に試着室があって
"あの頃に比べるとだいぶ老けたな"と
鏡に映る自分を見て、思う




―― そして


ただ、なんとなく
その姿見の前にベースを置いて



店をそのまま出てしまった







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