群青の月 〜『Azurite』take00〜



横を見ると、
カッパと変わらない位の
小さなお婆さん


手ぬぐいを頭に被って
エプロンをし、モンペを履いている



「 ……ごめんねぇ
今年は畑がやられて
キュウリばっかりなんだわ 」

カッパはしゃがんだまま首をふり
ガシガシとキュウリをかじる



そしてお婆さんの顔を見て、
柔らかく笑った



…睨みつけた時とは大違いだな




そして俺の姿に気がつくと
一気に劇画調の、驚き顔に変化して
あわてふためき逃げて行った




ここのキュウリだったのか


段ボールを四角く切った紙に
マジックで『百円』とあり

俺はポケットから小銭を出して
手の平で白い、硬貨を探す


…確かにあのキュウリは美味かった


「 ください 」


「 はいはい 」



百円を二枚渡すと
ビニール袋いっぱいに入れてくれた



「 お兄さん大きいから
いっぱいたべな〜 」


「 ありがとう 」


なんともノンビリする雰囲気で
こちらの顔も、思わずほころぶ


くしゃくしゃな、その良い顔に
少し質問してみた



「 …今の子は、毎日来るんですか? 」


「 うん〜 わたし、
ここ最近来たんだけれどもね

毎日この時間から来て
夕方まで一緒にいてくれるの

最初、カッパかと思って
心の臓飛び出たんだけれどもね 」


吹き出してしまった


「 …やっぱりカッパですよね 」


「 カッパだよぅ
可愛くて優しいカッパさんだ 」



「 明日も来ますかね カッパ 」


「 いんや、今もいるよ
あっこ、隠れてる 」



しゃがんだまま
お婆さんの指が指す方を振り返ると

カッパは生け垣に隠れ
こちらの様子を見ている

また慌てて、後ろに引っ込んだ


お婆さんが手を振って
『おいでおいで、いいからいいから』と
首を縦に、何度も何度も振る



それを見てカッパは目を泳がせ
おずおずと、
こちらに向かって、歩き出して来た






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