群青の月 〜『Azurite』take00〜
お婆さんを見送り、横を振り向くと
もうカッパは走り出していて
道を渡って行ってしまった
夕方になり
街灯の明かりがつく
ラーメン屋とおでん屋が
ガタガタと準備を始めた
ついでだし少し待って、
ラーメンを食って帰ろうと思う
再び生け垣に座り
下を向いて、煙草に火を着けていると
「 青山くん 」
男性の声がした
知っている声だったので
急いで立ち上がると、胸の辺りに老人の顔
「 竹田さん 」
"ちょっといいかい'と
煙草を見て、指で合図され
箱を揺らして、少し出す
それを一本とって
俺は火をつけようとしたら
手の平を横に振って、一本口にくわえ
自らのライターで火をつけて笑った
「 青山くんよ
あそこの居心地はどうだい 」
「 とてもいいです 」
「 俺が死んだら、あそこは君にあげるよ 」
鼻と口から煙を出して、ニマリと笑う
「 ……縁起でもない 」
本気でそういうと
昔は相当男前だったろう顔に
シワを寄せてニコリとする
…見ると、
ラーメン屋の親父が慌てながら
思い切り竹田さんに、頭を下げていた
竹田さんは
左のシャツの袖をヒラリと揺らして
右手に煙草を挟んで
頭を下げて、挨拶をする