群青の月 〜『Azurite』take00〜
八月二十五日
昨晩は緑くん宅に
灰谷と二人で泊まらせて貰い
奥さんの手料理を
腹いっぱい食わせて貰った
小さなアパートの二階
二部屋とキッチン
居間は赤ん坊グッズに占領され
ミルクのにおいが
ほのかに充満している
「 …青山…あやすの上手いな
意外だわ 」
俯せになって、
新聞を読んでいる緑くんが
赤ん坊を抱っこしている俺に呟く
「 …顔、緑くんに似てるな 」
「 そーなんだよ そこはホッとしたわ
うちのに似ると、鼻が低…どわあ!! 」
通過する奥さんに、緑くんが踏まれた
奥さんは高笑いをしている
灰谷がじっと赤ん坊を見ているが
常に少し、距離を置いていた
「 抱かせてもらえば 」
「 おお いいよ 」
「 …いいよ 何か怖いから 」
灰谷が、目をテレビに移して
そちらに見入ってしまう
緑くんと俺は苦笑し
出かける準備を、少しづつ始めた
「 けど赤池から連絡来ねえなあ 」
「 寝てるのかな まだ 」
「 ちょっと携帯鳴らしてみるわ 」
暫く微かに、呼び出しが聞こえていたが
すぐに留守電に変わってしまった
「 駄目だ…
昨日、仕事忙しかったみたいだからな
青山も隙見て、鳴らしてみて 」
「 それよりも
迎えに行って来ようか 」
「 ……俺行って来るよ 」
「 お 若者さすが! 」
「 …ごちそうさまでした 」
奥さんが、灰谷を玄関まで見送り
緑くんも寝たまま
『 気をつけてなー! 』と手を振った
パタンと扉がしまり
「 連れタバコ行かない? 」と
緑くんに、ベランダへと誘われる