群青の月 〜『Azurite』take00〜
青とオレンジの交差する
スポットライトの下
―――……細くて
色の薄い
随分伸びた 長い髪
白い指が緩く 絡まり
オレンジに染まったそれが
マイクスタンドを握る
唇が動いて歌うのは
『You』
ラムネ瓶みたいな
変わらない碧い瞳
激しいのに
吐息みたいにかすれた
甘い声
周囲は絶叫だったらしいが
俺には聞こえなかった
演奏が終わって
蘭さんが泣いて叫んで
『Azurite』を呼んでる
赤池さんも
緑くんまで
最前列
俺の横には灰谷が居て
まるで光を見るみたいに
薄く、笑いながら
他の観客に押され続けて
体がゴムみたいに揺らされて
潰されても
鉄棒に手をついて
歌う、あずるを見ていた
誰かが叫んでる
横を向くと
刃物を持った、随分痩せぎすの男
朝のあいつとは違う
そいつは、真顔のまま
サクを乗り越えようとして
俺はその右手を捻り上げ
ナイフを取りあげ、前に向け
腹に数回膝を、思い切り入れる
灰谷がそいつに乗り上がり
俺からナイフを取って
そいつの腹を刺そうとしたので
慌てて止めた
そして気を失ったそいつは
黒いTシャツのスタッフ集団に
囲まれる様にしてホールを出た
三ヵ所位で、同じ光景