群青の月 〜『Azurite』take00〜
看板の明かり
閉じられたライヴハウスの前で
一人立ち、煙草を吸う
――― 足元には
二つのベース
コンビニ横
低いビルの間の道から、二つの影
「 おかえりなさい 」
「 た…ただいまです… 」
「 青山さん…… 」
灰谷の目に
ただ、笑って首を振る
「 ……青山さん、あさっては
夕方5時でいいの? 」
「 …うん 吉祥寺 」
「 1? 2? 」
「 1の方
急に入ったライヴで申し訳ないね 」
「 …わかった
……後さ コイツ終電、ないから… 」
「 了解してるよ
駅の駐車場まで行って、それから送るね 」
「 ええっ?!私千葉ですよ?!
ダメですよ!!! 」
「 高速乗ればすぐだよ 」
「 じゃあ 俺、行くから
……二人共、おやすみ 』
「 おやすみ お疲れ 」
ゴツゴツと、黒いブーツの音をたて
コンビニの横を通り
一度も振り返らずに
屋上のある方向へと、灰谷は向かう
途中から走り出した音が
微かに聞こえた
それを"ユカちゃん"は
信じられないといった目で、呆然と見送る
「 …… 見事、玉砕? 」
「 え!!
…は………はい…… 」
ポンポン、と 肩を叩いたら
"ユカちゃん"の眼の防波堤が 決壊した