群青の月 〜『Azurite』take00〜
駅に近付き、人通りが増えて来た
デパートは閉まっていて
ショーウインドーだけ明るい
横断歩道で人が増え
仕事帰りの酔っ払ったサラリーマンが
うたいながら歩いている
あずると一緒に居た癖で
ユカちゃんを、反対側に促した
信号を見て気がつく
――… ああ…ここか
「 …そかぁ… 」
「 ん? 」
「 いやー… 朝、『彼』
信号変わり切ってないのに
どんどん走って行っちゃって 」
「 …ああ
…でも『アズ』はもっと危ないよ
信号が何だろうが
車が走ってようが
人の姿みつけたら、
一目散に走って来るから 」
「 む 無鉄砲?!」
駅のロータリー
その通りには飲食店
「 バンドの練習の帰り
ここのラーメン屋でよく飯、食ったよ
当時は明け方までやってたから
あずる
『ギョウザ、肉抜きで』
とか言って
親父さんにボウズ頭、張り倒されてた 」
「 ボウズ?!」
「 そ、ガリガリで、ヒョロっとしてて
碧い眼だけ目立ってたな
ボウズ頭で、だから俺達のそのバンドは
『ボウズ』って名前だった 」
三台入る小さな駐車場
黒い車の横に立ち、鍵を開いた
「 どうぞ 」と声をかけ
ユカちゃんは助手席に
車のエンジン音
「 ベース貸して、後ろに置く 」
「 あ!はい
ありがとうございます! 」
スポーツバックを後ろに置き
シートベルトをしているが
うまく出来ない様で、はめた
クーラーの音
「 あ、煙草平気? 」
「 はい お父さん吸ってますから 」
運転席側の窓を開く
ハンドルに両手を置きながら
煙草を出す
ジッポライターに火がついて
煙草の先が朱く、染まった
… ああ
身長が同じ位なのか
あの頃のあずると、ユカちゃんは
紫煙が、一回戻って
窓の外に また流れて行った