群青の月 〜『Azurite』take00〜




走り出した窓の外に
新宿の高層ビル群

空の闇には
青黒い積乱雲が沸いている

明日は、多分雨




そういえば
あずると、この車でドライブした事
一度も無かったな



あいつに、海とか
夜の街とは違う景色を
見せてやりたかった

水族館とか、プラネタリウムとか




―― ラジオから
ちょうど四年位前に流行った
UKロックの曲が流れて来て
時間がズレたみたいな
おかしな感覚になる




「 …今の時間なら
もしかしたら電車よりも
早くつくかもしれないな

帰り、ベース忘れない様にしないと 」




「 はっ!!そうだ!!!」



ユカちゃんは、
あずると、持っている空気が全然違い
幸せな家のにおいがある





「 で、でも
青山さんだって、更衣室に
ベース忘れたって聞きましたよ?! 」




「緑くんか

…あれはねえ
本当の事、言っちゃうと


捨てたんだ 」



「 ………え?! 」




―― なんとなく、昔話を始めてしまった






< 234 / 262 >

この作品をシェア

pagetop