群青の月 〜『Azurite』take00〜





「 す…捨てたって 」


前をみつめながら
ゆっくり、話す



―― 嘘と、本当を混ぜて




「 ……『アズ』は元々
一切、自分の事話さない奴で

メンバーも
携帯しか知らなかったんだ

ある日
突然バンドに来なくなって
携帯にかけても出ない


『ボウズ』も最初は
ヴォーカル変えて
やったりしてたんだけど、解散になって



それで他のバンドにも入ったんだけど
…やっぱり、駄目だったんだよな 」



「 …そんなに、『彼女』は

凄かったんですか 」




「 ……クサイいい方だけど
"コイツとなら
どこまでも行ける'と思った

男女関係無く
ミュージシャン同士としてね 」




―― これは、本当だ





「 …
…くさく…ないです 」



ユカちゃんが、少し泣いている




「 ………そんな感じを
一度味わっちゃって
…元々変なこだわり強いから
どこのバンド行っても喧嘩になって

一度キッパリ、楽器持つのやめたんだ


でも、家にあると視界にあるし、辛くて

だからって
ゴミ捨て場に捨てる根性も無いしね


そんな時
助っ人してくれって
世話になった知り合いに、頭下げられて


…当時よく行ってた
メシ屋の前に、やっぱ良く行ってる
ジーンズショップがあってさ

楽器しょってて
音楽やってそうな奴、客に多くて

それ見てて

ああ、誰か これを拾って
…弾いてくれれば
俺、それでいいかなあって


夜からライヴあるのに



更衣室に、置いて行ったんだ 」



「 ディ…ティッシュ…
貰っていいですか 」



「 どうぞ 」



「 すいませ…… 」



「 でもコイツ 戻って来るんだよね 」




「 へ…… 」





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