群青の月 〜『Azurite』take00〜
「 だからごめんって!
嘘だってば
ほら、ジャガ芋クンとか
インターで買ってあげるから 」
ユカちゃんは助手席を飛び越えて
後ろの席に逃げた
俺のベースを抱えている
「 …真実の香りがしました
家に着くまで、ベースが人質です。 」
「 うわ 酷え 」
大笑いした
「 ……別に、
たいした事じゃないんだよ
…『アズ』が当時付き合ってた奴を
俺があんまり好きじゃなかっただけ 」
「 嫉妬じゃないですかそれ 」
「 …そういう
簡単なのでは無かったな 」
「 簡単… 」
「 …嫉妬してたのは、そいつもだよ
しかも『アズ』にね 」
「 え……良くわかんない
彼氏が彼女に嫉妬…? 」
「 ミュージシャン同士だから 」
「 あ… 」
「『アズ』がそいつに
頼ってる様子も無かったし
いつもバイトしてたようだし
その割に
彼氏の方は、街で遊んでたの良く見た
…バンドやめたのは
体悪くして倒れたせい
そして色々…あって
俺が……救急車呼んだんだ 」
「 …泣くだけの、彼氏…? 」