群青の月 〜『Azurite』take00〜







―― 廊下を歩いている時


多分これは、夢なんだろうと思った


あずるが消え
目が覚めると 必死に居所を捜して




捜し出せず、何もかも見えなくなって

ただ、歌詞の無い唄が聞こえていた





いつも見たのは

空だけが真っ青で
世界中に、誰もいない夢



俺はそこでずっと
独りでベースを弾いてた



このまま灰になってもいいと思い
手を見ると


―― あずるの血で、真っ赤に染まってる




『 ここどこ? 』と聞かれ

答えられずに


ただ、泣くだけの夢




どこかで楽器の音がして
冷や汗で目を醒まし、ドアを開くと

紙を貼ったみたいな青空で


まだ夢の続きなんだとホッとすると
風の音がして、現実なんだと判る


―― 何をしていてもその感覚が続いて
ベースを弾いた時の重さだけが
確かなリアルで――



けれどそこでまた聞こえるんだ




歌詞の無い
あずるの声が――














「 ……遅えよ アホ! 」



「 おかえり〜 」



「 おかえりなさい リュウジ! 」







< 249 / 262 >

この作品をシェア

pagetop