群青の月 〜『Azurite』take00〜
―― 廊下を歩いている時
多分これは、夢なんだろうと思った
あずるが消え
目が覚めると 必死に居所を捜して
捜し出せず、何もかも見えなくなって
ただ、歌詞の無い唄が聞こえていた
いつも見たのは
空だけが真っ青で
世界中に、誰もいない夢
俺はそこでずっと
独りでベースを弾いてた
このまま灰になってもいいと思い
手を見ると
―― あずるの血で、真っ赤に染まってる
『 ここどこ? 』と聞かれ
答えられずに
ただ、泣くだけの夢
どこかで楽器の音がして
冷や汗で目を醒まし、ドアを開くと
紙を貼ったみたいな青空で
まだ夢の続きなんだとホッとすると
風の音がして、現実なんだと判る
―― 何をしていてもその感覚が続いて
ベースを弾いた時の重さだけが
確かなリアルで――
けれどそこでまた聞こえるんだ
歌詞の無い
あずるの声が――
「 ……遅えよ アホ! 」
「 おかえり〜 」
「 おかえりなさい リュウジ! 」