群青の月 〜『Azurite』take00〜
「 …おれ、警察いかなくていいの 」
キッチンからタオルを持って来ると
突然奴が、外を見ながら言った
「 ――悪いのは完全に向こう
…おまえのやった事は
過剰防衛になるのかもしれないけど
あれ位したから無事だったとも言えるし
最初に手を出したのも向こう
目撃者多数
訴えるか? 」
「 ……おばあちゃん無事ならいい 」
「 …何か格闘技やってるのか、お前 」
それに対してカッパは
ソファーの横に平積みしてあった
フランス語の原書を指差し
身体を横たえたまま
パッと開いて、すぐに閉じる
そしてレポート用紙に
暫く何か書き、それを俺に見せた
「 ……読んだ事、あるのか? 」
「 ――― 意味はわからない
"開いた所を覚えて書いた'だけ
空手は、小さい、頃
…家の近所にジムがあって
少し教わったけど、多分、そのせい
あいつらみたいのは
動かない的しか殴った事ないから
絡まれても、何とかなるんだ
…でも、カカシには、無理だった 」
「 …子供の頃からやってたよ
最近は、ベースばかり弾いてるけど 」
―― 部屋の隅の天川の壷に、
昨日医者が忘れて行った、傘を立てる
昔、中國から
酒等を入れて、運んだものらしい
冷房をかけた部屋に
湯気が上がる