群青の月 〜『Azurite』take00〜
俺がじっと見てしまっていたせいか
しゃがんだままのそのカッパは
向こうを見たままグイと
俺にキュウリを一本、差し出して来た
―― これは受け取るべきなんだろうな
… 困った
躊躇しているとカッパが
再度、キュウリをグイと奨めてくるので
「 …なんでキュウリなの? 」
そう質問してみた
「 …… 」
…意味不明だよな
その時
また走る足音が聞こえて来て
カッパは跳び上がって、
辺りをキョロキョロ見回す表情は必死だ
本当に逃げたいらしい
なんとなく俺は
"悪さをして逃げているカッパの昔話"を
思い出して
とっさに、また鍵を開け
白い手を引き
"それ"を扉の中に入れてしまった
一瞬
その手首の細さにギョッとしたが
とにかくそのカッパを、守る事に決めた