群青の月 〜『Azurite』take00〜
同じ夜の下と言うのに
新宿の横濱のそれは、全く違う空気
大学は東京にあるし
バンドの練習も
近くのライヴハウスの二階にある
スタジオを借りてやっている
皆違う場所に住んでいるから
交通の便がいいのだ
だから、そんな空気云々は
重々、承知してる筈なのに
運転手が『ここです』と言って
車を停めたのは
新宿西口から少し奥に行った
表層はデパートが並ぶ裏のビル
マンションがいくつもあるのだが
その中では比較的新しい
クリーム色の建物に連れていかれた
エレベーターに乗って到着したのは五階
部屋のドアは右手に列び
左側の、俺の胸位の壁の桟の向こうには
都心の高層ビルの光が点滅する
突き当たり迄来て
一番奥の部屋の鍵を開けられ中に入ると
雑然と段ボールが置かれ、
真ん中に四列びのデスク、電話が置かれた
何か通信販売の事務所の様だった
てっきり
ここに住むのかと思っていたから
荷物を置こうとすると
『上ですよ』と言われ
その部屋の奥のドアを開くと
更に奥への、階段があった