群青の月 〜『Azurite』take00〜





そして当たり前なのだが

やはりそれはカッパでは無さそうで

頭の中を、日本昔話のテーマが
回っていたものだから
ほんの少しだけ、ガッカリした




…のだが

何だかその風景は、一気に場面を展開し

『海賊船に掠われて来た
憐れな少年と悪い某』みたいになって
少しだけ焦る



彼はまたもや、そんな俺を気にせず
大事に持っていたキュウリの袋を持ち

椅子にあぐらをかいて座り直し
もりもりと再び食い出した




暫くそれを見ていたが

俺はキッチンの棚から茶を出して
ヤカンに水を入れ、火をかける


そして
仕事場の人が持って来てくれた
遊園地からのお土産の
チョコレートの缶を出した



黙って差し出すと

"いいのか?"と言う表情で
上目使いに、碧の硝子が俺を見る




キュウリ食ってる時の闘争的な目と違って
妙に、それがかわいらしい



かなり可笑しくて

なんとなく笑いながら、黙って頷き
自分も中から一つ取り、口へと入れた





缶をそっと覗き込んでいる、
ヒヨコみたいな小さな頭


「 俺が今食ったの白だ
塩チョコみたいだね 」



そいつは俺が剥いた袋を確かめて
同じ物をとって、丸ごと噛む


そして咳込んだ



「 うわ ほら  」

茶はまだ沸いていないから
水道から急いで水を汲んで
そのコップを渡す



咳が止まらず
それでも必死でガマンするから

背中を、慌てて摩する






―――… 何だこのガリガリ



背骨の節が、触れるだけで分かる



カッパモドキは首で頷き、
俺から少し離れて、コクコク水を飲み出す


ウミガメみたいに
目から、涙が流れてる



ティッシュを渡すと
思い切り鼻をかんで、また咳き込んだ







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